寝たきりになった祖母の介護をする29歳、無職の著者。
彼の独り言から、揺れ動くその内面を浮き彫りにする。
『介護入門一、誠意ある介護の妨げとなる肉親には、如何なる厚意も期待するべからず。――被介護者とともに生き、ともに死ぬ覚悟なき義務感など、被介護者を必ずや不快にさせると思え。責任感は気高く、義務感は卑しい。』
『介護入門 一、無言で介護するべからず。介護床の離れ小島に被介護者は横臥する。幾ら同じ屋根の下であろうと、傍を離れるときは島を離れると思え。小島に残した家族と再会を果たし得た折、無言で居るなら会う甲斐などなきに等しいではないか。』
『自分を育てた年長者をあたりまえに敬ってきた永いヒトの歴史の一部として今ここに俺があり、――祖母がこのおばあちゃんだったから、このあたりまえに気づくことができたのだと受け止め、強張る唇で「長生きしてや」と祖母に呟いた。』
『俺は絶対的にまともな考え方で絶対的にあたりまえのことをしてきた、その結果今や祖母は死から隔離されているのだと信じる
――本気でそう思うことだけが俺を支える。』(本文より)
饒舌な文体とリズミカルな語り口で介護と家族とに迫る、衝撃のデビュー作。美徳や建前ではなく、現実をリアルに見つめた1冊。 |